ドイツローカルクラブでの2シーズンを、体験記として公開しています。ドイツ社会人サッカーの「リアル」をお伝えできれば幸いです。
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この記事は、
ドイツで2年プレーした私が、「ドイツサッカーと、日本サッカーの違い」という観点で、実体験をまとめたものです。
ドイツでのデビュー戦で
「なんだコレ!日本のサッカーと違う競技やん!!!」とカルチャーショックを受け、心が折れたのが始まり。
その日から、一つひとつ積み重ねた経験が、誰かの役に立つことを願って書きました。
この記事の特徴
■ドイツで、選手として2シーズンプレーした経験を中心に書いています。
ドイツで指導者研修を受けた人の意見でもないし、テレビで海外サッカーを見ている専門家の意見でもない、選手としての生の声です。
単発の経験ではなく、年単位でプレーしたからこそ見えてきたものもたくさん載せています。
■包み隠さず、本音を書いています。
プロ選手が、自分の体験談を全て語るとは思えません。
自分が必死で見つけたノウハウを簡単に公開すれば、ライバルの成長を助けてしまうかもしれないからです。
大手留学斡旋会社は、選手の体験談を編集します。悪い話ばかりでは、申込みが少なくなるからです。
私は損得勘定をする必要がありません。自分の経験が日本サッカーに少しでも役立つよう、苦労して見つけた大切なことも含めて、全て公開しています。
■ドイツに特化しています。
ドイツでの体験しか持ち合わせていないので、ドイツサッカーに絞って書いています。
(きっと、ブラジルサッカーとは違うこともたくさんあると思います。)
ただ、私がドイツでプレーしたのは、2014年から2016年。
ドイツ代表が、ワールドカップチャンピオンとして君臨している時期です。
「世界最強国のリアル」はリーグのカテゴリーを問わず、価値があると信じています。
それでは、私が感じた「ドイツサッカーと、日本サッカーの違い」をご覧下さい!
なんせ、フィジカルありき。
1.ドイツ人は、同じサッカーという名前の違うスポーツをしている。
日本のサッカーは、球技。
ドイツのサッカーは、格闘技。
ドイツでのデビュー戦で受けた、交通事故のようなタックルは、一生忘れられません、、、。
シャルケで長年活躍した、内田選手も、あるインタビューで、
「ドイツでは、戦えるやつが良い選手」
「日本のサッカーとドイツのサッカーは、同じスポーツとは言えないくらい違う」
「スタジアムは、闘技場だ」
と話されています。
(https://youtu.be/lAsf3_zRFWk)
2.ドイツ人のキックのパワーは、物凄い。
シュートレンジ、シュートスピードが、日本人と全然違います。
弱いシュートは笑われます。
私が所属していたクラブの小学生カテゴリーを見ていると、コースよりも、明らかにスピード重視で、思いっきりシュートを打つ練習をしていました。
3.ドイツ人は、ストレッチ無しで動ける。
練習前に静的ストレッチをして、ランニングや足上げで体を温めているのは私だけ。
チームメイトは、グランドに入るとすぐにボール回しを始めます。
ストレッチ無しで、平気でロングボールを蹴り合っている選手もいます。
4.ドイツ人のテクニシャンは、日本人のテクニシャンと同じ技術レベルで、15センチ背が高い。
日本人、165センチ、テクニックとクイックネスで勝負!みたいなタイプの選手が、ドイツでは180センチあります。
私は、サッカーを始めた頃からドリブルが得意でした。
しかし、それは日本人が相手という前提において。
ドイツ人のフィジカル、守備力の前では私のドリブルはほとんど通用しませんでした。
ドイツ人のフィジカル、守備力を相手に磨かれたドイツ人ドリブラーが、日本人ドリブラーと体格が違うのは当たり前のことかもしれません。
MOVEMENT GLOBAL FOOTBALL代表の植松慶太氏も、
「日本の子ども達のドリブルは、世界で通用するレベルで鍛えられていない」
と指摘されています。
(https://coachunited.jp/column/000432.html)
5.ドイツ人は、日本的なテクニックはないが、試合では問題にならない。
基本的にノンプレッシャーでのトラップ、パス、ドリブルは、日本人の方がドイツ人より上手いです。
ただ、プレッシャーがかかる状況では、別の話。
ドイツ人はトラップが多少ズレても、フィジカルの強さでカバーします。
日本人である私は、少しのトラップミスも許されません。
屈強なドイツ人の、猛烈なタックルに耐えられないからです。
少しのミスも許されないと感じてしまうと、過度なプレッシャーを自分で作り出し、ミスをしてしまいます。
6.ドイツ人は、フットサルをしない。
1度だけ、冬に屋内の人工芝で、サッカー5(いわゆるフットサル)をしましたが、コーチもチームメイトも、「怪我をするからなるべくやりたくない!」と言っていました。
体育館でのフットサルなどもってのほか。
何より、狭いスペースでのテクニック重視のゲームは、ドイツ人にとっては、単純につまらないそうです。
メンタルも、とてつもなく強い。
7.ドイツ人は、試合になると何倍も力を出す。
これはヨーロッパでプレー経験がある人なら誰もが納得のはず。
ドイツ人は、練習時の2倍くらいのパフォーマンスを試合で出します。
あんなにパッとしない選手がなんでこんなに活躍するんだ!と何度も驚きました。
フランスのプロクラブで、チャンピオンズリーグにも出場した日本人女子サッカー選手とも、この話で盛り上がりました。
彼女は、「マイペース」(多様性を受け入れ、一人一人違って当然、自分は自分と感じている)、「勝ちたい気持ちの強さ」、「プレッシャーを楽しむ感覚」がヨーロッパ人の、試合におけるハイパフォーマンスの理由だと分析していました。
ヨーロッパ人は、試合で、自分の得意の形、パターンに持ち込むのも本当に上手いです。
8.ドイツ人は、猛烈に負けず嫌い。
日本人とは、負けず嫌いのレベルが違います。
とにかく、目の前の相手を打ち負かそうとします。
練習試合で、チームメイトが相手選手から報復行為のファールを受けて病院送りになったのは衝撃的でした。
9.ドイツ人は、頻繁にスライディングをする。
簡単に抜かれることは、絶対に許されません。
最後の最後まで、スライディングで食らいつきます。
8部リーグであろうと、ファールをしてでも、相手を止めることは当たり前です。
10.ドイツ人は、ゴールを最高に喜ぶ。
ゴールは最高の栄誉です。
日本人とは、喜びのレベルが違います。
ゴールした本人も、チームメイトも、心の底から喜びます。
それは、ストリートサッカーでも同じ。
子ども達は、ゴールを決める度に最高に嬉しそうに(大袈裟に)ガッツポーズをします。
11.ドイツ人は、パスをしない。
ゴールを決めればヒーローなので、せっかく自分の元に届いたボールを、簡単に人には渡しません。
私は、オフザボールの動きにも自信があったのですが、初めの頃はあまりにパスが来ないことに驚きました。
レスター加入直前にお会いした岡崎選手も、
「ヨーロッパに来て、パスが来るのを期待することをやめた。」
「日本では、5本走って1本パスが来ていたが、こちらでは、10本中1本しか出てこない。それでも走る。」
「人のために走るのは、自分のスタイルだから。それに見返りを求めているわけではない。」
と話してくれました。
そもそも、サッカー文化が全然違う。
12.日本より、リーグのレベルが高い。
日本人プレーヤーがドイツでプレーする場合、日本と比べて1〜2カテゴリー下のリーグでプレーするのが一般的です。
J1の選手であれば、ドイツでは、2部か3部でプレーすることが多いです。
元鹿島の大迫選手も元浦和の関根選手も、まずは、ドイツの2部リーグに移籍しましたね。
留学希望者必見!今の自分は、ドイツ〇部リーグレベルだ!と一発で計算する方法
13.ドイツでは、8部でも、活躍すれば、スーパースター扱い。
チームを残留に導くゴールを決めた日は、人生最高の1日でした。
歩けば祝福される、という状態です。
中村俊輔選手も、「ヨーロッパでのサッカー選手の存在価値は高く、点を決めればヒーロー」だと語っています。(もちろん、私の話とは全然レベルが違いますが)
(https://www.football-zone.net/archives/78840)
14.ドイツでは、8部でも、給料をもらえるクラブがある。
月数万円程度ですが、給料をもらえるチームもあります。
ドイツでは、3部リーグからプロ扱い。
3部で、年収1000万円に届くそうです。夢がありますね。
3部で年俸1400万円!サッカードイツリーグの給与事情まとめ
少し話がずれますが、ドイツ7部リーグからのぼりつめ、ヨーロッパリーグの舞台でプレーした選手も居ます。夢がありますね。
(https://www.soccer-king.jp/news/world/el/20180215/716178.html)
15.ドイツでは、8部でも、観戦有料の場合がある。
怪我で出場できなかった時に、たまたま応援に行った所属クラブのアウェイゲームが、入場料1人650円で驚きました。
(選手としてピッチにいることが多かったので、長い間知りませんでした。)
ホームチームが作成したマッチデープログラムを、貰うことができます。
16.ドイツでは、8部でも、子どもと手を繋いで入場することがある。
アウェイで、対戦相手の下部組織の子ども達と手を繋いで入場しました。
17.ドイツ人監督は、試合前の話が長い。
私の所属チームの監督だけかもしれませんが、、、。
アップ前に、20分以上話します。
元々ドイツ人は議論好き、話好き。戦術を語り出したら止まらない感じでした。
18.ドイツでは、副審無しで試合を行う。
8部カテゴリーの普段のリーグ戦は、基本的に主審1人で、全てのジャッジを下します。
(入替戦などの大事な試合では、第四審までいましたが)
はじめは、ちゃんとオフサイドの判断ができるのかな?と思っていましたが、意外とわかるようで、判定を巡って口論になることはほとんどありません。
審判が1人いれば試合が成立するという考え方は試合開催のハードルを下げ、ひいては、誰もが手軽に試合を楽しめる環境に繋がっていると思います。
19.ドイツでは、交代でピッチの外に出ても、再度出場できる。
8部カテゴリーの試合では、一般的なルールのようです。
最小限のベンチメンバーでやりくりできるので、結果的に選手一人ひとりのプレー時間を増やすことができます。
20.ドイツ人は、大事な試合があっても、平気で旅行や遊びを優先する。
サッカーが文化になっていて、本当にサッカーが大好きなドイツ人。
しかし、「サッカーが人生の全て!」という感覚ではありません。
(これはドイツ人の仕事に対する考え方も同じです。仕事より、旅行、遊びを優先するのが一般的。)
私が、残留のかかったとても大切なリーグ最後の2試合に先発出場できたのも、レギュラーメンバーの1人が旅行で欠席だったからかもしれません。
まとめ
「ドイツで2年プレーして感じた、日本サッカーとの違い」を大きく分類すると下記の通りでした。
ーフィジカル
ーメンタル
ーサッカー文化
簡単に言うと、ドイツの「サッカー」は日本の「サッカー」と同じ名前の違う競技です(笑)。
両者の違いはとても大きく、私は適応するのに1年かかりました、、、。
(1年もかかると、挑戦(留学など)の期間が終わってしまいます)
これからドイツでプレーする方は、私と同じ轍を踏まないよう、事前の予習資料として活用いただければと思います。
この記事が、日本サッカーの発展に少しでも貢献できれば幸いです。
■最後に一言。
日本人と外国人は色々違いますが、ボールを蹴れば誰とでも繋がれる。
国籍の違う人と、サッカーで繋がれるのは最高に楽しい!!!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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