ドイツローカルクラブでの2シーズンを、体験記として公開しています。ドイツ社会人サッカーの「リアル」をお伝えできれば幸いです。
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入団から1ヶ月が経った8月下旬、いよいよ公式戦デビューの日がやってきました。
公式戦はもとより、ドイツでの練習試合の経験もない私にとって、待ちに待った初めての試合です。
雨の中のアウェイゲーム。
私達のホームグランドと同じように、天然芝のピッチに、レストラン付きのクラブハウスが併設されていました。
初めて経験する試合前のロッカールームは、テレビで見たことのある、ヨーロッパのそれでした。
チームのミュージック担当が音楽をかけ、全員が試合に向けて気持ちを高めています。
監督が音楽を止め、話し始めました。
ドイツ語がわからない私には、詳細を理解することはできませんでしたが、ホワイトボードを使っていたので、何となく内容を推測することができました。
初めてのメンバー発表。
一番気持ちが高まる瞬間です。
残念ながら、まだ1stチームのメンバー全員の名前も知らず、ドイツ語の数字も覚えていない私には、誰がどのポジションで出場するのか全く理解できませんでした。
発表後に、隣に居たベテランFWのニコに「俺はスタメンか?」と聞くと、「君はサブで背番号12番だ」と教えてくれました。
スタメンで出たいと思っていましたが、自チームの戦術も、フォーメーションもさっぱりわからない状況では、サブもやむなしという気持ちになりました。
試合が始まると、ようやく、チームメイトのポジションやスタイルがわかってきました。
フォーメーションは、4-1-4-1。
私のサッカー人生では、経験したことのないものです。
自分が出るとしたら1トップか、2シャドーのどちらかだろうと思いました。
試合は終始劣勢、前半で0-3となってしまいました。
ただプレーしている選手達(相手選手も含めて)のレベルが高いとは、全く思いませんでした。
私は「ここに試合を変えるスペシャルな日本人が隠れているから、早く試合に出してくれ」という気持ちで、ハーフタイムのアップを行なっていました。
後半15分、監督から声がかかりました。
ついにデビューの瞬間、心がワクワクしました。
ポジションは、右サイドハーフ。
雨が強くなり、得意のドリブルがどこまで出せるかは不透明でしたが、このレベルなら、残り30分でインパクトを残せると思いました。
最初のワンプレー。
私は、斜め後方の味方から、ショートパスを受けました。
この先ずっと忘れられない経験が訪れます。
私がトラップをした瞬間、交通事故にあったような衝撃を受け、体が2メートルほど吹き飛びました。
DFから目を離した一瞬で、間合いを詰めるスピードと、経験したことのないパワー。
カルチャーショックでした。
私は、ボール扱い、とりわけドリブルに自信を持っていました。
しかし、この後、試合終了までの25分間、植え付けられた恐怖心で、まともにボールを触ることができませんでした。
試合は1-5で終了。
これまでの長いサッカー人生で、最低の、屈辱的な試合でした。
私が日本でプレーしていたサッカーとは全く違う、、、。
信じられないパワーと、ファイティングスピリット。
自分のレベルが低いというより、そもそも、ドイツのサッカーは、日本のサッカーとは別のスポーツだと感じました。
今までやってきたサッカーは、一体何だったのだろう、、、。
これまでのサッカー人生を否定されたような、圧倒的絶望感に打ちひしがれた、忘れられない1日でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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